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「きりひと讃歌」

発行日 種類 タイトル 発行所 判型 備考
1970年04月10日号
〜1971年12月25日号
- ビッグコミック 小学館 B5判 連載 -
1972年03月10日 COMコミックス増刊 きりひと讃歌(上) 虫プロ商事 A5判 - -
1972年04月10日 COMコミックス増刊 きりひと讃歌(下) 虫プロ商事 A5判 - -
1974年11月20日 ハードコミックス きりひと讃歌(上) 大都社 B6判 - -
1974年11月30日 ハードコミックス きりひと讃歌(中) 大都社 B6判 - -
1974年12月30日 ハードコミックス きりひと讃歌(下) 大都社 B6判 - -
1977年06月15日 手塚治虫漫画全集31巻 きりひと讃歌1 講談社 B6判 -
1977年08月18日 手塚治虫漫画全集32巻 きりひと讃歌2 講談社 B6判 -
1977年11月20日 手塚治虫漫画全集33巻 きりひと讃歌3 講談社 B6判 -
1977年12月20日 手塚治虫漫画全集34巻 きりひと讃歌4 講談社 B6判 -
1986年09月30日 ハードコミックス きりひと讃歌(上) 大都社 B6判 -
1986年09月30日 ハードコミックス きりひと讃歌(下) 大都社 B6判 -
1989年06月20日 小学館叢書 きりひと讃歌(上) 小学館 四六判 -
1989年07月10日 小学館叢書 きりひと讃歌(下) 小学館 四六判 -
1994年11月 小学館文庫 きりひと讃歌1 小学館 文庫判 -
1994年11月 小学館文庫 きりひと讃歌2 小学館 文庫判 -
1994年11月 小学館文庫 きりひと讃歌3 小学館 文庫判 -
2010年02月 手塚治虫文庫全集043 きりひと讃歌(1) 講談社 文庫判 -
2010年02月 手塚治虫文庫全集044 きりひと讃歌(2) 講談社 文庫判 -

『作品内容』
<第一章>六六号室
M大学医学部付属病院に所属する小山内桐人。 小学校時代からの友人である占部とはある意味いいコンビだった。
実践型の桐人に対してそれを後で纏め上げる占部。 彼らはお互いに竜ヶ浦博士の元にいた。 そして今彼らが抱えている患者は「モンモウ病」と呼ばれる奇病に侵されていた。 ビールス説を唱える博士に対して先天性気質を訴える桐人。 そんな桐人には美しい婚約者・いずみがいた。 しかしそのいずみに心を動かす占部は桐人が患者を見ている隙に彼女を犯してしまう。 モンモウ病の患者はついに命を落とす。 これまでの見解を論文にまとめた桐人は博士に提出する。 それを見た博士は桐人に対し患者発症の現地である犬神沢村に行ってはどうかと誘い桐人はそれに乗る。

<第二章>袋小路
村に着いた桐人は異常な数のカラスに囲まれたある家を発見する。 しかし案内人は見てみぬふりをするように進める。 村長以下の出迎えを受ける桐人だったが,明らかに排他的な雰囲気を彼らから感じる。 その夜桐人は村長からの「馳走」である生娘"たづ"を心ならずも抱く。 たづの父親はモンモウ病に犯されていた。 あのカラスの集まる家はモンモウ病に侵され,異物嗜好症に陥った患者が生肉を食べる場所だった。 村の秘密を知ってしまった桐人に村から脱出する術はすでになかった。 桐人はたづと結婚し,村で医師として過ごす。 あるときいずみからの手紙を受け取った桐人は中身が抜かれ検閲されていることを知る。 村役場に殴りこんだ桐人は割れるような頭痛に襲われる。

<第三章>前駆病状
モンモウ病に感染した桐人は村から「お仲間」として扱われる。 そのころ東京では音沙汰のない桐人を案じたいずみが犬神沢村に行くと占部に話す。 裏に陰謀の影を感じた占部はいずみを押しとどめ,自らが村に行きたい旨を竜ヶ浦教授に話す。 しかし,教授はそれを阻止するかのように占部に南アフリカの学会に代理として出席するように依頼する。
占部はローデシア地方にもモンモウ病と同じ症状が出ることを知る。 村ではたづの父親が死亡した。 桐人はなんとしても病気の正体を突き止めるために村中の土,水などを採取し始める。

<第四章>陥没
桐人はモンモウ病の原因が谷川の水にあることを突き止めた。 その水を飲み続け,ある成分に当たったときに発病するのだ。 実際桐人は村の水を飲まなくなってから発作がおさまっていた。 しかし,その顔は,顔はすでに大きく人とはかけ離れ犬のようになっていた。 いずみは桐人を訪ねて村に来るが,包帯で顔を巻いた桐人は嘘をついて彼女を帰してしまう。 保健所に通告するために桐人は村を降りていくがその途中でたづが首に傷のある男に 犯され命を絶つ。 たづの復讐を誓う桐人は立ち寄った旅館で思わず生肉に手を出してしまい追い出されてしまう。 さらに彼は大学病院の名簿から抹消されていることを知る。 意気消沈している桐人をすりが襲い,追跡の途上で絡めとられてしまう。 気がついたとき,桐人は体中を縄で縛られ,船に乗せられていた。 そして万の旦那と呼ばれる男の証文にサインをさせられてしまう。

<第五章>ゴルゴダの丘
占部は南アフリカでモンモウ病に犯され,隔離されている黒人たちを見る。 彼はそこで竜ヶ浦博士の生体実験についての話を聞く。 果たしてそれは桐人のことではないのか…。 そしてその夜,マクラッケンと名乗る白人の医師に連れられて修道院に行く。 そこにはモンモウ病に犯された修道女,ヘレン=フリーズがいた。 人種にかかわらず侵されるモンモウ病,竜ヶ浦博士の訴える伝染病説に 疑問を覚える占部。 そんな占部とヘレンをピストルで撃つマクラッケン。 彼は彼なりに奇妙な病気に侵された修道女と秘密を知った東洋人を生かしておくわけには行かなかったのだ。 運ばれていく途中で車を奪った占部はヘレンとともに黒人街の医師に助けられる。 死を選ぼうとするヘレンに対してキリスト教徒でもない占部が ゴルゴダの丘の話をしてヘレンに生きるように諭す。

<第六章>阿呆宮
台湾の大資産家である万大人。 彼は幼いころから苦労し現在の地位を築いてきた。 その彼自身の心の復讐を兼ねて世界中の奇形を集めて日夜宴会を繰り広げていた。 桐人もその中の一人として「犬」として牝犬と交わることを強要される。
そのつらい日々の中,彼は蓮花と名乗る人間てんぷらを演じる女と知り合う。 市民から恨みを買っていた万の邸宅内であるとき爆弾事件が起こる。 桐人と蓮花はその隙に脱走をする。 万大人は事件が二人の仕業であると断定して追跡を始める。 高尾に逃れる途中で桐人は蓮花が異常性欲者であることを知る。 しかし,それも病気なのだと話す。

<第七章>暗溝
医師会選挙のスポンサーである吉永を訪ねる竜ヶ浦教授。 吉永はいずみの父親だった。 二人の会話から占部が明日帰国することを知ったいずみは少しでも桐人のことを知るため 迎えに行くことを母に話すが,行かないほうがいいといわれる。
裏に何かしらの陰謀を感じたいずみは叫ぶ。 翌日占部はヘレンを伴って帰国する。 竜ヶ浦は自らの権勢欲のためにモンモウ病をなんとしてでもウイルス説で固めようとしていた。 心の内では反発する占部だが表に出すことはできなかった。 占部が休日を取っている間に犬神沢村村長の田中が竜ヶ浦を訪ね桐人の在村中のことを語っていった。

<第八章>溶解
蓮花とともに山越えを図っている桐人。 ある山小屋で桐人は連花によって監禁されてしまう。 彼女は身体障害者に性欲を覚えるサテリアージスだった。 40日経ったとき,桐人は縄を切ることに成功し,蓮花を逆に治療しようと試みる。 そんなときに山小屋を訪ねるものがいた。 彼らは高砂族であり,以前見た桐人を悪魔と決め付け捕まえようとしていた。 だまして銃を取り上げた桐人だったが逆につかまってしまう。 蓮花とも引き離され見世物にされる。 一方,台北では万大人がモンモウ病に感染していた。

<第九章>狂ったメス
竜ヶ浦教授はヘレンに対して医学総会の際に彼女を公開したいと申し出る。 しかし女性でもあるヘレンの公開には反対を唱える占部。 あるときM大学に台北病院から電話が入りモンモウ病患者が送り込まれる。 万大人だった。 秘書は小山内と名乗る犬男から感染したのではないかと話す。 衝撃を覚える占部。 半狂乱となった彼はヘレンを犯す。 桐人のことを知ったいずみは自殺を図る。 そのいずみの元を尋ねてくる一人の男。 彼はたづを犯したあの男だった。 そんなことも知らない占部はいずみに頼まれて男を逆に訪ねる。 そこで彼は桐人の足取りを知り,さらにモンモウ病の原因が犬神沢村の谷川の水であることに気付く。 万大人も愛飲していた「智恵水」を分析する占部はさらに確信を深め,村へと出かけていく。 村役場で大学病院からの電話を受けた占部はヘレンが失踪したことを知る。

<第十章>栄光へのアプローチ
医学総会を明日に控えた竜ヶ浦教授。 発表レポートの確認に余念がない。 ヘレンの失踪はあったが万大人を公開することでしのぐことになっていた。 しかし,その万大人の病状が急進行し息を引き取ってしまう。 解剖を依頼するが秘書がそれをはねつけ帰国することになる。 絶望する教授だったが吉永からヘレンがある教会に保護されている情報を得る。 何とか外に出せるように交渉するように依頼する。 数日の寝不足から頭痛がした教授は医局から頭痛薬を取り寄せる。 ちょうど切らせていたため看護婦はあの「智恵水」を教授に届ける。

<第十一章>ヘレン・フリーズ
ヘレンに愛を告白した占部は教会から出すことに成功する。 さらに彼女は医師総会への出席も承諾する。 その裏で占部はいずみと偽装結婚し桐人を探すことを画策する。 竜ヶ浦はヘレンを公衆の面前にさらし,モンモウ病の伝染病説を力説する。
しかしそれに真っ向から反論するマンハイム教授(フランケン・シュタイン)がいた。 ヘレンを見舞ったマンハイムは占部からも反伝染病説を聞き困惑する。 なぜ竜ヶ浦教授はその節に耳を傾けないのか,と。 記者会見も成功し,竜ヶ浦は自信満々となる。

<第十二章>ネクロージス
高砂族の村で檻の中に入られていた桐人。 長老の家で召使として働いていた蓮花は長老が病気になったことを桐人に知らせ, 治療を進める。 主治医と相談した上で山の洞窟に運び外科手術を施す。 手術は成功するが,桐人を人と認めない若者連中が洞窟に入り込み, そのときの興奮で長老は死んでしまう。 さらに追われる身となった桐人と蓮花は逃亡を図るが,医師の行為によって特別貨物機に乗り オランダを目指す。 しかし,そこに同乗した村上と名乗る男の勘違いによってアラブゲリラに捕まり, 再び逃亡を続ける。 高砂族を二人殺害していた桐人は自暴自棄となっており,途中でゲリラに殺された母親から 産み落とされかろうじて息をつないでいた赤ん坊をも殺害しようとする。 蓮花に諭されて正気に戻る。

<第十三章>バザールにて
赤ん坊も息を引き取った。 町にたどり着いた三人だったが一文も持たない彼らに町民は冷淡だった。 さらに村上が日本人と名乗るとさらにそれは拡大した。 反日感情が高まっていたのだ。 何とか金を手に入れるために蓮花は万大人の邸宅で行っていた人間テンプラを執り行う。 しかし,装置の破損により興行は失敗し,蓮花は命を落とす。 涙に暮れる桐人。

<第十四章>閃光
伝染病説を謳う竜ヶ浦博士は時の人となった。 しかしその裏で占部は精神病と診断され,自分の立場が侵されることを恐れた教授は占部を中央病院に移す。 そこを脱走した占部はいずみを自分のマンションに連れ込み犯す。 教授と吉永が訪れたときはすでに遅く占部はどこかへ消えた後だった。

<第十五章>幻のマリア
占部はヘレンをつれて奥羽大学を訪れる。 そこでヘレンの顔面整形手術を依頼する。 ヘレンにそのことを告げた後占部は外に出て,自動車への飛び込み自殺を遂げる。 占部の死を知った竜ヶ浦教授は高らかに笑う。 奥羽大学は手術を中断し,竜ヶ浦博士の使いにヘレンを引き渡す。 その途上,ヘレンはある田舎町で自分のように骨の変形症によって苦しむ人の多い町にとどまる決心をする。

<第十六章>帰郷
異国のとある村で医療活動をしていた桐人は村人の持ってきた医療雑誌を見る。 そこから竜ヶ浦博士が伝染病説を唱えていること,さらに自分がどんな境遇をたどったのかを知っていたことを知る。 今の運命は博士によって仕組まれていたことだった。
自暴自棄になる桐人に対して村人たちはなけなしのお金を集めて日本への交通費を都合する。 桐人は日本での用事が住んだら必ず戻ってくることを約束して旅立つ。

<第十七章>邂逅
日本に帰ってきた桐人は犬神沢村でたづを殺した男を見る。 彼を捕まえた桐人はたづを埋葬した寺に詣で,懺悔をさせる。 その後村長を呼び出して竜ヶ浦のしてきたことを告白させる。 温泉でヘレンの噂を聴いた桐人は匂田市に向かう。 患者の面倒を見ながら神に仕えるヘレンの達観した心情に出会った桐人は そのすべてに賛同できないながらも教授への復讐とともに異国の患者たちのことを思い出す。 そんな教授は医師会の会長を訪ねながらも頭痛に襲われていた。

<第十七章>邂逅・(二)
医師会館で医師会会長選挙が行われていたそのとき,桐人が現れた。 彼は自分が教授によって陥れられたこと,村長の証言などを演説し,去っていく。 しかしその甲斐もなく,教授は会長に当選する。 桐人はいずみに電話をかけ,自分は無事生きていること,そしてたづと結婚したことを告げて去っていく。 狂喜する教授であったが,すでに彼自身モンモウ病に侵されその症状は明らかに出ていた。

<第十八章>カタストロフィ
いずみは家出をし,ヘレンをたずねる。 そこで桐人のことを聞くとともに彼女が占部の子供を宿していることを知る。 竜ヶ浦教授は犬神沢村の水の分析を命じてその結果を待っているとき桐人の訪問を受ける。 そのときテレビではマンハイム博士がモンモウ病はある水に含まれる放射性元素が原因であることを 突き止めたことを報道していた。 同時に医局の分析からも同じ結果が出ていた。 膝を屈しない教授を横目で見て桐人は去っていく。 それから数週間後,教授は危篤に陥っていた。

<第十九章>プログノーシス
桐人はマンハイム教授を訪ねてあの村へ帰ろうとしていた。 いずみはヘレンの教会で無事彼女の分娩を見取っていた。 ある人からの連絡で桐人の居場所を知ったいずみは両親にそのことを話し,旅立っていく。

<参考文献:ハードコミックス>

『一口メモ』
この作品との出会いはかなり早くたぶん小学生の低学年だったと思います。 叔母の家に講談社全集の1巻だけありました。
あんまり内容とかもわからないままにたぶん「恐怖」漫画のひとつだったのでしょう。 高学年になってからかな,古本屋さんで2巻を見つけました。 3,4巻を入手してしっかり読めたのは中学生になってからだと思いますが, そのころにはある程度内容がわかりますからその怖さの意味合いが変わっていきました。 今回解説を書くために読み直したのですが,今迄で一番衝撃的でした。
一コマ一コマから手塚先生の息吹が感じられますし,物語中の反日感情とか 異人物としての扱いが海外で仕事しているからか,なんとなくわかるのです。 別に個人的に差別を受けているわけではありませんが,多少空気がありますよね。

人物の輪郭をギザギザ線で描くなどの実験的試みが随所に見られます。

『図版使用書籍』
手塚治虫マンガ漫画館(1977年)
マンガ漫画の魅力(1978年)
現代まんがシアター1 手塚治虫(1979年)
手塚治虫 マンガの魅力(1979年)
手塚治虫まんが大研究(1982年)
手塚治虫漫画40年(1984年)
ビッグコミック3月10日号(1989年)
手塚治虫の世界(1989年)
手塚治虫展図録(1990年)
手塚治虫氏に関する八つの誤解(1990年)
手塚治虫とっておきの話(1990年)
Siesta 9/10月号(1991年)
手塚治虫の軌跡(1992年)
手塚治虫論(1992年)
手塚治虫はどこにいる(1992年)
過去と未来のイメージ展図録(1995年)
こころにアトム(1995年)
月刊カドカワ9月号(1995年)
手塚治虫大全(1997年)
もっと知りたい手塚治虫(1997年)
手塚治虫博物館(1998年)
手塚治虫全史(1998年)
蘇る! 9月号(1998年)
コミック・ゴン 第3号(1998年)
神様手塚を読む(1999年)
文藝別冊 手塚治虫(1999年)
人間ども集まれ!【完全版】(1999年)
SF Japan Vol.03 手塚治虫スペシャル(2002年)
ダ・ヴィンチ2月号(2003年)
手塚治虫記念館(第5刷)(2003年)
ROCKIN'ON JAPAN4月19日増刊号 SIGHT(2003年)
手塚治虫記念館(第5刷)(2003年)
手塚治虫の「新宝島」(2007年)
ダ・ヴィンチ2008年7月号(2008年)
MEN'S NON-NO 2008年12月号(2008年)
東京人 2008年12月号(2008年)
手塚治虫×石ノ森章太郎 マンガのちから(2013年)
手塚治虫とキャラクターの世界(2013年)
手塚治虫美女画集(2014年)
手塚治虫ぴあ(2016年)
手塚治虫の世界(2017年)
扉絵原画コレクション1950-1970(2017年)
ぼくの旅行記(2017年)
わたしたちの手塚治虫(2018年)
pen 3月1日号(2018年)
僕らが愛した手塚治虫<推進編>(2018年)
pen+ 手塚治虫の仕事。(2020年)
手塚治虫語辞典(2023年)